『マイノリティからヒーローが生まれる』
加藤登紀子・家入一真
今回のナチュラルハイのブッキングの中でも特に話題になっているのが、家入一真。ひきこもりから、起業。数々のビジネスを手がけつつ、 2014年東京都知事選挙へ出馬し、インターネッ党を旗揚げ。その原点にあるのは「居場所づくり」だ。今回のインタビューでは、加藤登紀子さんとマイノリティとコミュニティデザインについて話してもらった。道志の森ではもっともっと話が聞きたいぞ!
聞き手:南兵衛@鈴木幸一 文/写真:葛原信太郎
どうやって、モノを作らないで生きていくか
加藤登紀子(以下加藤)あなたはITの仕事をしているでしょう?私にもITで仕事している友だちがいて、畑にも一緒に行ったりしたんだけど、同期には自然の中にいると吐いちゃう人がいるって。自然は魑魅魍魎ですよね。土の中に虫がいたり、曲線が多すぎたり、そういうのが耐えられない人がいるっていうね。生まれたときからコンクリートの上にいて、ホコリもなにもないところにいると、そんなこともあるのかなって。あなたはそんなことない?
家入一真(以下家入)それはないですね。もともと福岡のど田舎の生まれで、ムカデが天井から落ちてくるような場所だったので。だから自然もたくさんありました。ただ、今はそこがベッドタウンになっちゃって、でっかい複合施設もあって昔住んでいた頃とはちがいますね。今は新しいものを自然を壊してまでつくる必要はないと思ってます。昔みたいにバラマキで、でかい建物をどんどんつくって、それで地方にお金をまわすっていう政治も無理じゃないですか。この少子高齢化で、人口も減っていく中での税収では。これからは、どうやってモノをつくらないで生きていくか、もう既にそこにあるものをどうつかっていくのかですよね。
加藤 あとは、規模を小さくしていく。
家入 「大きいことがいいこと」っていう価値観あったと思うんですけど、今は「小さいことがいいこと」っていう時代になってるのかなって。
お金を排したコミュニティってつくれないのか
加藤 でも、農業では同じ品目のものを何十キロだせるかが未だに価値だったりする。うちの夫はいろんなものを手がけるのが好きな人でしたから、すっごくおいしいヨーグルトとか納豆とかいろんなことやったんですよ。それでひどい目にあったことがあるの。
大量に生産できないとコンビニには卸せないんだけど、それでもコンビニに置いた方がいいって言われて。たくさんのお金をかけてヨーグルトの工場をつくったのよ。それで毎日うちの下にあったコンビニに3個入ってくるわけ。で、その3個が完売しないとすぐ切られる。だから、私は毎日3個買い続けたんだけど、ちょっとだけ水っぽいヨーグルトが出た日があって、それでバンって取引を切られたんですよ。投資したお金が全部パーになった。
せっかくやってきた自分たちのビジネスですから、どうやったら大きくできるかっていうことを一生懸命に考えていたと思うんですけど、とても勉強になりましたね。だから今も、コンビニに出してる人ってそんなリスクを負ってるんだなって思うと、胸いっぱいになっちゃう(笑)並んでるのを見て、みんな大変だねって。
家入 僕もそれこそ数十億っていうたくさんお金が入ってきた時期があるんですけど、飲んだりとか、いろんな人に投資したりして、最終的に僕の手元にはほぼ無くなっちゃって。お金がある時にいた人たちも、お金がなくなった瞬間にいなくなって、1人になったんですよ。あれ〜みたいな。お金使いまくったけど、幸せじゃなかったなって気づいて。
僕はずっと会社をやってきているので、雇用する、給与を払う、給与分働く、という中でいろんなものをつくってきたんですけど、そうじゃない、お金を排したコミュニティとか組織とか、そういうことを考えるようになったのは、そこからですね。
マイノリティからヒーローが生まれる
家入 僕は今も会社経営をしながら、居場所づくりをやっているんです。心が病んでしまっている子とか、お金がない若い大学生とか、そういう人たちが一緒に住むことで生活費を下げながら、自分のやりたいこととかやるべきことを探していく、というシェアハウスを日本中につくってるんです。これまでは、政治っていうものをあんまり考えたことはなくて、法律の関係ないところで共同体を作っちゃおうぜっていう感じだったので、今回の選挙は、政治の側から居場所をつくるということを見てみたかった部分もあります。
選挙が終わっても、引き続き僕は居場所を作り続けるんですけど、その視点は変わりました。今までは法律とか国とか行政とか俺たちになんにもしてくれないから、そっぽ向いちゃえっていう感じだったのが、単純に背を向けててはダメだなっていうか。
加藤 あたしも緊急課題だと思ったのが居場所です。社会が変化するときっていうのは旧来のシステムの中から外れちゃうアウトサイダーが次の社会を作っているんですよ。
家入 だから単純にかわいそうな対象っていうか、実際にシングルマザーで食うのも生きてくのも大変っていう人もいますけど、ただそれだけじゃなくて、普通から外れてしまっているからそこから生まれるエネルギーというか。マイノリティーの中から次のヒーローが生まれると思ってるので。
僕のシェアハウスに住んでる子たちは、金があっても別に幸せじゃないじゃんって何となく知っちゃってる子たちだから、金よりはどっちかっていうと、思いっきり社会貢献みたいな子もいれば、まぁ死なない程度に稼いで自由なことやろうぜってラブ&ピースみたいなやつらもいて、ある意味現代版ヒッピーなんじゃないかなと思うんですよね。
加藤 今の人達はヒッピーよりもっと現実的で、建設的だと思う。一緒に農業をやっていた若い人たちが、宮崎の田舎に引っ越してこの間会ってきてんだけど、とても幸せそうに暮らしていて、こういうふうに暮らしたいとか、暮らしを自分で作りたいっていうか。それは自分が毎日素敵なように、着るものから食べるものから、子どもたちとの会話の仕方から、全部自分たちの世界を持って暮らしているっていう感じがしましたね。そういうのはヒッピーって感じじゃないんですよね。もっとちゃんとしてるというか(笑)
家入 生きるってことを再構築してるんですかね、もしかしたら。
加藤 真っ当ななにかが始まりかけてるのかなって。
——というわけで、そろそろまとめに入りたいんですけど、ライフスタイルとか、自然とか、そういった新しい価値観を体感して試せる場がフェスティバルだと思うんですよ。2000人がキャンプインして、大自然の谷間3日間過ごすっていうのはそれだけでもちょっとしたコミュニティのシュミレーションですしね。
加藤 自然の中でもうちょっとおいしいもの、食べたいわね(笑)
——自慢のお店ばかりなので期待してください。そして、自然環境が本当に最高な場所なんで。登紀子さんはこれで4回目ですかね、ベテランなんですけど、家入くんは初めてだから、どんな体験になるのかも楽しみにしています。また道志の森でもしゃべってもらって、どういう話が広がるのかも楽しみですね。
加藤 そうですね、とにかく焚き火だね。寒いし、気持ちいいわよ。
家入 ぜひぜひ。楽しみにしています。