2013年の開催の時にインタビューした長野修平さんの記事を再アップ!親子の関係とモノ作りに関して聞いてみました!
ネイチャークラフト作家 長野修平
Natural High!に1回目から参加してくれている長野さん。
長野さんのブースでは、毎年100人以上が箸をDIYしていく。
夜になると、焚き火を囲みお客さんと一緒に語り合う。
ナチュハイに無くてはならない場所として、大人気だ。
「やっぱり、手作りが最高なんだよ」
DIYでお父さんとしての威厳を
自転車がパンクした時にどうするって日本の子どもに聞いたら、ほとんどは自転車屋さんに持って行くって答えると思うだよね。でも、ニュージーランドでは、反対にほとんどがお父さんに修理してもらうって答えるらしい。日本は、壊れたら全部人任せなんだよね。アメリカなんかDIYの国だから、みんな自分たちで作って修理するでしょう。「アメリカは悪い」って言うけど、そういう部分では開拓者精神っていうか、DIY精神を見習うべきだと思う。お父さんの威厳も保てるし、悪いところはないよ。
直して使うっていうのは、そこに美学がある。千利休の時代の茶の湯なんかも「金継ぎ」って言って、漆で継いだ後に金箔を貼っていくんだけど、割れて継いだところに価値を見出しているわけです。朽ちた木をわざわざ持って来て床の間に飾ったり、日本独自の文化としてあったはず。「もったいない」とか「丁寧に暮らす」って、最近よく言われているし、そういう人たちを増やしていきたいって思う。
子どもが芋掘りのためにスコップが必要になった時、僕は竹でスコップを作って持たせた。そうすると「そのスコップなあに?作ったの?」って同級生がうらやましがる。今時、ありえないじゃないでしょう。必要なものはすぐ買える。でも、親が作ったものを子どもが使ってくれるって、こんなに親にとって自分のエゴが満足することはないんですよ(笑)もうやった!みたいな。三輪車だって作ったんだよ。大人はみんな「わーすごい!」って言うじゃない?だから「どう?私のよ。」って自慢気で、そういのは嬉しいよ。そういう喜びをお父さんに味わってほしい。チョコレートだって、金額が高いものより、手作りのほうがうれしいでしょう。やっぱり、手作りが最高なんだよ。
知恵をつないでいくこと
でもね、ただものを作ればいいってわけでもない。学校の工作でよくあるけど、ペットボトルに色を塗って、加工して、ボンドでくっつけてって…最初はわーって遊ぶけど、一ヶ月もするとほこり被ってゴミになって、リサイクルもできない。とても相反する活動を、リサイクルというテーマでやっちゃってる。どんぐりもボンドで付けたら、山に持っていってもボンドが残っちゃう。そういう時には、ごはん糊でつけるとかね。原発もそうだけど、作ったはいいけど、最終的にどうするのか。ネイティブアメリカンは7世代先のことを考えて、今何するのか決めるって言いうけど、最後の面倒が見れるものづくりをしなきゃいけないと実感するよね。
僕は若いころ、ネイティブアメリカンやアイヌの人からいろんなことを教えてもらった。それは何世代にも渡って培われた「知恵」。知恵っていうのは、教えてもらったら次に伝える義務がその人に生じるんですよ。誰かに伝えていかないと、そこで途絶えてしまうから。だけど、そこで自分たちの暮らしに合うようにアレンジして伝えなきゃいけない。そうしないと実用の知恵にはならないからね。わらじを編むわら細工の教室とかよくあるけど、わらじなんて今履かないでしょう。わらを使って作るんだったら、ティーセットで使えるコースターとか、ティーポットカバーとか、今のおしゃれ思考な人でも欲しいアイテムにアレンジする。そうすれば、次の世代の人も、次のそのさらに次の人たちが使えるようにどんどんアレンジしていってくれるはず。
祝!箸作り1000人!
僕はね、キャンプの手前というか、まだ自然活動とかに興味を持ってない人たちの入り口を作ることが役割だと思っていて。都市生活と自然活動の境目のところで、都市生活者にポンポンとヒントを投げる。おもしろそうって来てみたら、実はエコや自然、アウトドアだったりする。こっちへの道筋は、実はこんなにいっぱいあるんだよって。Natural High!では、1年目から毎年箸作りの教室やっているんだけど、毎年100人近く参加してくれる。今年で通算1000人を超すんじゃないかな。そして、作った人たちが翌年持って来てくれるんですよ。「こんな飴色になったよ!」とか「壊れちゃったけど、こうやって直したよ!」とか。これからも、障子に穴開けてのぞいてみたくなるような、そういうことをして、メッセージを伝えて行けたらいいな。
長野修平(クラフト作家)
北海道の山菜料理店生まれのマルチなネイチャークラフトマン。初回から参加のNatural High!では、毎回満員の竹箸ワークショップの他、焚き火を中心としたワイルドなアウトドアスタイルからお洒落なナチュラルライフまでを提案。『BE-PAL』『ガルヴィ』などでクラフトや野外料理を連載中。著書『東京発スローライフ』(オレンジページ)